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診療を止めずに、
病院をつくりなおすには

日本医科大学創立130周年の節目の事業としてスタートした千駄木再開発計画も佳境を迎え、新病院前期完成を平成26年春に予定している。
新病院建設の設計施工は、日本が世界に誇る総合建設会社の大成建設株式会社が担う。 大学病院本院ならではの診療、教育、研究というそれぞれの立場からの多様なニーズを一つの建物というカタチにする設計の責任者を務める恒川真一さん(一級建築士/大成建設)に病院建設の舞台裏をうかがいました。

新病院の建設コンセプトをお聞かせください

計画初期から、高度先進医療の充実、患者さんの安全と安心の確保、患者さんや職員全ての人に使い勝手の良い快適な施設、といった基本骨子をご提示いただいていました。そのため、高度医療を実現する機能性の確保、利用者の視点に立った利便性・快適性の両立をコンセプトに建物の計画を進めてきました。またこれらのコンセプトを実現するために運営上の工夫としても新しい取り組みに挑戦しています。具体的にはPSC(Patient Support Center: 患者支援センター)の充実や、ユニバーサル外来などがその一例です。これらは、患者さんを病院機能の中心に据えて、利便性や快適性、そして良質な医療を来院される全ての方に提供できることをめざしているからです。

恒川 真一
建設する上で、どのような苦労がありましたか?
付属病院の建替えは、地域を支える基幹病院として診療、教育、研究を中断できないという絶対的な条件をクリアするために、部分的に解体、建設、移転を繰り返すローリングと呼ばれる建設手法を用いています。また敷地は本郷大地の高台と不忍の谷との境目に位置し、高低差の大きな斜面地となっています。加えて敷地は狭隘で、建替えに十分な空地が無いことなどから、設計も施工も様々な難題に直面してきました。
これらの課題を迅速に解決しなければ工事が進みませんが、その都度、皆で知恵を出し合って乗り越えてきました。また今回の病院建設では珍しい手法も数多く採用しています。例えば総合設計制度*の適用や、近隣の方々へできるだけ日影を落とさないように地上のボリュームを抑え、地下を5層にしていること、中間層免震構造の採用などがあります。これらによって、多機能でありながら安全で快適な空間を、限られた敷地の中で実現することをめざしています。
新病院建設ではゼネコンならではの手法が用いられているそうですが、具体的にはどのようなものですか?

ローリングでの建替工事によって、東館と本館を繋ぐ渡り廊下が一時分断されてしまう恐れがありました。付属病院は本館と東館で一つの病院ですから、分断されてしまうと、例えば手術の際の移動で患者さんが屋外を通らなくてはならなくなるなど、病院機能として大きな問題となります。そこで、現在の上空の連絡通路を壊す前に、既存のC棟を残したままでも新病院と東館を繋ぐことのできる方法として、地下の連絡通路をシールド工法というトンネル工事で実現しました。シールド工法とは円筒型の巨大な機械をもちいて、掘削と壁面づくりを同時に行う方法で、海底トンネルや地下鉄の路線を造る際などに採用される工法です。しかしながら、病院建設とはいえ、公道の地下を専用しますので、行政各署との調整は困難を極めました。こういった所にも、我々のノウハウを活かして貢献できたことは大変嬉しく思っています。

恒川 真一
千駄木再開発プロジェクトへの想いをお聞かせ下さい。
本プロジェクトを通じて、日本医科大学付属病院は、世界に誇れる高度な医療と地元に密着した優しさ、暖かさが共存する病院だと肌で感じてきました。それだけに、今後も付属病院に愛着をもって来院される患者さんに優しさ、暖かさを残しながら、未来の患者さんや地域の皆さんにとって、安心できてよりどころとなるような空間を実現したいと考えています。また私個人としても、会社人生の半分近くを費やしてきた非常に思い入れのあるプロジェクトですので、日本医科大学様の明るい未来の一助となることが出来れば、個人的にも会社にとってもかけがえのない大きな喜びになります。



※:総合設計制度
総合設計制度とは、建設対象の敷地の中に、地域や街並みに貢献できる公開空地などを設けることによって、都市計画で定められた容積や高さなどの制限が緩和される制度の一つ。今回の計画では狭隘な敷地の中で広い床面積を確保するために利用された。病院の建設においてこの制度を利用するのは珍しい。

恒川 真一

恒川 真一  SHINICHI TSUNEKAWA

大成建設株式会社 設計本部 建築設計第五部 設計室長
一級建築士

現在でも、週の内の4、5日は千駄木の現場事務所にいます、という恒川さん。千駄木から、大成建設のある新宿に戻る大江戸線の中が一番リラックスできますと微笑む笑顔がとても素敵でした。
学校法人日本医科大学 アクションプラン21:新病院建設プロジェクト